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スーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』麦わらの挑戦観劇に寄せて~伝統芸能の未来~

すごく高尚な文章が始まりそうですが、全然そんなことありません!!
最終的にサンジくん最高!!!というパッションを叫んで終わることを予言します。

 

座長の四代目市川猿之助さんが上演中の事故で怪我をし、休演されているというニュースは新聞やワイドショーでも取り上げられ、多くの人の耳に届いていることだと思います。

スーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』(以下ワンピース歌舞伎と表記します)は2015年秋に東京・新橋演舞場で初日を迎え、その後2016年に入り大阪・松竹座、福岡・博多座と地方公演も成功させ、その秋には映画館で歌舞伎が見られるシネマ歌舞伎でも上映されました。そして2017年10月6日(金)から待望の再演の幕が開いたところです。(2018年春には松竹座と御園座(名古屋)での公演も予定)
幕が開いてわずか4日目、そんなタイミングで座長であり、主役のルフィとハンコックの2役を演じる看板役者猿之助さんの休演が余儀なくされたワンピース歌舞伎が、主役の「休演」で済んでいるのは本当にすごいことだと思います。「中止」の決定が出ても全然おかしくない状況です。


私が猿之助さんの怪我のことを知ったのは新幹線の中でした。隣に座っていた友達が車内の電光掲示板に流れてくるニュースを見て、教えてくれたのです。ぽかんとしている私の代わりにネットニュースなども友達が見てくれて、骨折・重傷などのワードが出てくるに連れてもう確信に近い気持ちでした。


「明日から、尾上右近さんがルフィをやるんだ…」


他でもなくワンピース歌舞伎を観劇するために上京していたその帰り道のことでした。

 

既に色んなところで記事になっているのでご存知の方が多いと思いますが、今回のワンピース歌舞伎再演は、猿之助さんがルフィ/ハンコックを演じる本公演の他に3日に1回くらいのペースで『特別マチネ麦わらの挑戦』と銘打って、20代の歌舞伎役者をフィーチャーした若手公演が企画されていました。

その若手公演でルフィ/ハンコック役に抜擢され、10月8日(日)に若手公演初日を終えていた尾上右近さんが、猿之助さんの代役として本公演でもルフィ/ハンコックを演じることになったのです。

ちなみに、右近さんが本公演で務める予定だった、マルコは、サンジ/イナズマ役の中村隼人さん、サディちゃんはナミ/サンダーソニア役の坂東新悟さんが、若手公演で猿之助さんが務めるシャンクスは本公演同様、エース役の平岳大さんが演じられることになりました。(本公演と若手公演の配役が実質同じとなったため、チケット料金の違いは、差額を払い戻すかたちで対応されています)


座長が「休演」で、11月末まで新橋演舞場でのワンピース歌舞伎は続いている。何回も言いますけど、これは本当にすごいことだと思います。噂によると、猿之助さんは東京公演千秋楽までには戻るつもりらしく、払い戻しもその日の公演以降は対応されていないのだとか。猿之助さんは、若手公演では3幕終盤に出てくるシャンクスのみの配役だったので、そのくらいなら…と思っておられるのだろうか。全治6か月の開放骨折含む計3か所骨折と聞いたが大丈夫なのか。絶対に無理をしないでほしい。

 

話を戻しますが、私が観劇したのは10月8日(土)のマチネ公演で、今のところ猿之助さんがいる状態での、ただ一度の上演となった、本来の若手公演です。ただ一回の猿之助さんのシャンクスの目撃者になってしましました。
でも、だから、猿之助さんの怪我のニュースの後、すぐに「明日から右近さんがやるんだ…」と思えたように感じます。

 

 

だって、もう本当に、若手公演最高に良かったんで!!!!!!!

 

 

私は、初演松竹座を観劇した、サンジくん贔屓、東の海からのワンピースおたくで、さらにナマモノ、2.5次元大好きおたくなので、ワンピースが歌舞伎になると聞いたときは「さすが国民的大人気漫画ワンピースはスケールが違うな…」と思いましたし、既に東京タワーショーやUSJでのプレミアムショーでも2.5次元的な攻め方をしているジャンルで、今さら普通に舞台化はないだろうと思っていたので、すごい角度から殴ってきてくれて嬉しかったです。

また、歌舞伎の世界はほぼ初心者で、これを機に見られるという期待感もあり、絶対見に行くぞ!と決めていました。


これがまた期待通りにめちゃくちゃおもしろくって。とにかくド派手でお金と才能とパワーを詰め込んだ最高のショーでした。ワンピースという物語にも絶対的でわかりやすい型があり、歌舞伎という芸能にも絶対的な型がある。二つの絶対的な要素の強さがあって、どちらかに取り込まれないスーパーお子様ランチみたいな興業でした。
その時はお一人さま観劇みたいなものだったので、消化不良で秋にシネマ歌舞伎になるって聞いたときには身内友人を誘って見てもらいましたよ…。

 

再演に際して、若手公演があるなら見たい。と思ったのは、やっぱり初演の若手の活躍がすさまじく、その方達がフィーチャーされる配役だったからなんですが、そもそも、ここまで若手に見せ場をやらせようと思った猿之助さんがすごい。それに応えた若手がすごい。若手の成果を持って彼らに中心を任せた公演をやろうと思った猿之助さんがすごい…。

 

若手公演主役の尾上右近さんは、初演松竹座から白ひげ海賊団のマルコと、大阪からの追加キャラクター監獄インペルダウンの看守サディちゃん役でワンピース歌舞伎に参加されたのですが(地方公演から新キャラを追加するという発想とやっちゃえるパワーがすごい)、サディちゃんはめちゃくちゃ妖艶でかわいいし、マルコは本当にかっこよかったんですよ…。3階席から颯爽と宙を舞って降り立つキラキラの羽根で飾られた青い鳥…。
お目当てのサンジくんは事前公開されたビジュアルからもうかっこよすぎて、中村隼人さん…すぐに名前を覚えてしまいました…。ジャニオタにはすぐにわかってもらえると思うのですが93年生まれです。よろしくご確認ください。(堀越学園華の93年組で検索してください)とにかく隼人サンジくん、若い。二幕ではイナズマを演じているのですが、イナズマもすごい、キラキラしている…水を被ってもオーラがキラキラしている。
初演時、話題沸騰でした坂東巳之助さん演じるボン・クレーことボンちゃん。ボンちゃんは、ワンピース歌舞伎でおそらく一番愛されるキャラクターとなったと思います。坂東巳之助さんはご本人が大のワンピースファンということで、稽古場で「わからないことがあったら全部みっくん(巳之助さんの愛称)に聞く」と言われていました。そんな巳之助さんが作りこんできたボンちゃんは、あんまり使わない言葉なんですがすごい「再現率」でした…。1幕ゾロでドンと構えた麦わらの一味の殿を、2幕ボンちゃんはキュートで粋な両性類を、3幕スクアードでは白ひげのオヤジを立てたチンピラを。歌舞伎役者すごい。


初演で目立つ役目を務めた顔ぶれに、もっと挑戦させよう!と用意された若手公演。見ない手はない…。


松竹座で若手公演があるのかわからないし、加州清光as佐藤流司くんの単騎出陣という名のソロコンも見たいから、同日に友達も東京にいるって言うから、若手公演を見に東京に行けばいいじゃん?!と思い切りよくチケットをとった私ありがとう。(加州くんのソロコンは当たらなかったです…さすが2.5次元でてっぺん取りたいと言った男…一人で10日間16公演立見まで出してかっこいい)

 

本当に若手公演良かったので…みんな見に行ってください…座長の不在は本当に残念なのですが、損はさせません、全然損しません。

最後のカーテンコールが最高です。
休憩入れて4時間ちょっと、あのカーテンコールで締める爽快感。
私が見た時のカーテンコールは、最初シャンクスの猿之助さんが舞台中央に、そのあとアンサンブル(というのでしょうか?)~メインの順番で、最後に下手袖からナミさん、ルフィ、ゾロ、サンジくんが舞台中央に駆け出して来るんですよ…。あのきらめきに涙腺崩壊。そのあと、4人は下手に寄って、猿之助さんを真ん中にして緞帳が下りる…。多分今は、4人が中央のまま緞帳が下りるのだと思いますが、どうなのでしょう。
ルフィは尾上右近さん、ゾロは坂東巳之助さん、サンジくんは中村隼人さん、ナミさんは再演から参加された坂東新悟さんと、全員20代、歌舞伎界の次世代を担う若者たちです。
新悟さんが新たにナミさん達として加わってくれたことによって、少年漫画ワンピースの世界にフィットする若者の比重が増して、再演をパワーアップさせてくれたのかな。

 

若手の話ばかりをしてしまいましたが、脇を固める子役~ベテランの歌舞伎役者、客演役者は文句なくかわいくかっこいいので安心してください。
チョッパー役の市川右近くんと市川猿くん。文句なくかわいい。正直、お話的にはそんなに重要ではない、歌舞伎っぽさの部分で投入されてると思うんですが、そんなことはどうでもよくなるくらいかわいい。優勝。
イワンコフ/センゴクの浅野さんも演技の幅がすごいし、エース/シャンクスの平さんはめっちゃ渋くて、三幕の赤犬との決闘はアクションの方々含めて素晴らしいの一言ですし、市瀬さん(獄寺くん(アニメ)/イルカ先生(ナルステ)の方です!さすが殺陣師の動き…)青キジの吹雪ワイヤーアクションすごすぎですし、白ひげのオヤジやジンベエさんの安定感、白髭海賊団の隊長たちが並んだときの圧力など…。

そして舞台装置や特効、照明、衣裳などもとにかく豪華。二幕インペルダウンの滝(本水)を使った立ち回りは圧巻です。まあ、見どころしかないんで。
とにかく出てくる人たちがかっこいいので、思う存分拍手して、タンバリンを叩いて、泣いて来てください。
 
しかし、ワンピース歌舞伎が上演されていることを、猿之助さん休演のニュースで知った人がたくさんいるという事実。人気公演で再演なのに、今、初めてその公演の存在を知った人がたくさんいるという現実は、演劇・伝統芸能というジャンルが一般的ではなくて、いかに観劇に対してハードルを高く感じる人が多いか、ということが伺い知れる状況であるように思いました。
2.5次元だろうがミュージカルだろうが新感線だろうが、観劇する人としない人では根本的に好みが違うのだと思う部分もありますが、色々な文化芸術やエンタメが続いていくためにはファンがいなくちゃ成り立たない。極端に言えば何もかも、求める人がいないなら、ないも同じ。

 

舞台芸術の中でも伝統芸能と呼ばれるジャンルのものは殊更、歴史を背負っているだけに後継者だけでなく鑑賞者を育てていかなければという意識があるのかなと感じていて、歌舞伎界は特にその意識が強いと思う。
ワンピース歌舞伎もそうですが、そもそも”スーパー歌舞伎”というものがそうだし、『あらしのよるに』を歌舞伎化したり、現代演劇人を脚本・演出に呼んだり、ニコニコ超会議で上演されている初音ミクとのコラボ『超歌舞伎』も挑戦的。また、役者が積極的にテレビやドラマ・映画等の他のジャンルで活動しているのも一つの宣伝であり、歌舞伎へと鑑賞者を導くための仕掛けだと思います。。


江戸時代から続いてきた伝統芸能が、今から100年後、200年後どうなっているかなんてわからないけど、今まさに、歴史の途中の真っただ中にいる意識と、継承していく覚悟があるとか、そういう風に勝手に思ってしまう。
一つわかることは、ちゃんと歌舞伎界の人は歌舞伎が好きで、おもしろくて、めちゃくちゃかっこいいって思いながら、歴史と伝統の上に新しい未来を創っていこうとしているのだと。

そういう気概が粋でかっこいい。


だから、歌舞伎を新しいファン層に見てもらおうと、若手に挑戦させて成長してもらおうと、ワンピースというタイトルに挑戦し、若手に挑戦させた猿之助さんが創ったスーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』の公演が、止まることなく走り続けていることがとんでもなく眩しく感じてしまうのです。

 

願わくは、50年後、100年後、ワンピースが歌舞伎の常連演目、そして古典演目になっていきますように。

 

思ったよりも壮大な感じで締めてしまいましたが、歌舞伎のサンジくんめちゃくちゃかっこいいんで!スーツの上から羽織ってる衣裳がもこもこで最高なんで!!!原作ではもうあまり見ることのない19歳サンジくんにときめくし、サニー号に一味が集合しているだけで泣いちゃうんで!!

サンジくん早く帰って来て(原作)